「靖国」を上映する静岡の会
6月7日付 朝日、毎日、静岡新聞で「靖国」の静岡上映について掲載していただきました。
朝日新聞 2008年6月7日
上映中止問題が議論を呼んだドキュメンタリー映画「靖国」が、来月12,13日に静岡市内で公開される。
企画したのは「映画を見てみたい」と集まった会社員や主婦らによる「『靖国』を上映する静岡の会」県内での上映は初めてだ。
「靖国」は日本在住の中国人監督、李インさんの作品で、戦没遺族らが集う終戦記念日の境内の光景をナレーションなしで映し続ける。 公開前に国会議員向け試写会が開かれたり、トラブル警戒を理由に上映中止が相次いだりした。
「静岡の会」の自営業永田晴久さん(59)は「映画の内容を議論する以前に、上映中止で見る機会が奪われることがおかしいと思った」と企画のきっかけを話す。 市内の映画館に上映を持ちかけたが予定が立たなかったため、同じく映画に興味を持った市民らと上映を計画。 市民らによる自主上映は全国初という。
永田さんは「靖国」をまだ見ておらず、7月の上映を楽しみにしているという。 「靖国は日本の様々な問題の象徴。これをきっかけに日本人と靖国について考えてみたい」と話している。
静岡新聞 社説 2008年6月24日
静岡市の市民有志が、全国に先駆けて映画「靖国 YASUKUNI」の自主上映を決めた。
七月十二、十三の両日、同市葵区のアイセル21で上映会を行う。
この映画をめぐっては今春、上映を中止する映画館が相次ぎ、一時は公開が危ぶまれる事態に発展した。 その後、少しずつ全国の映画館が公開に踏み切ったが、県内の常設館ではいまだに上映の動きがない。
「『靖国』を上映する静岡の会」は「人口76万人の政令指定都市で一館も上映館がないのは、映画の内容以前の『表現の自由』の問題」と指摘している。 同感だ。自主上映を企画した市民の心意気に敬意を表するとともに、混乱なく全日程が消化できるよう見守りたい。 配給元などによると、これまで全国二十八地域の常設館三十五館が既に公開したり、今後の上映を決めている。 今月に入って自主上映の動きも広がりを見せ始め、静岡市を皮切りに五県八ヶ所で日程が決定したという。
「靖国神社は戦後の日本の象徴。興味深いテーマだし、一市民として純粋に映画を見てみたかった。 見た後の判断はもちろん自由。みんなで大いに議論してもらえれば」と同会。
憲法が保障する「表現の自由」「思想・良心の自由」は民主主義社会の根幹だ。 そこでは、自分と正反対の意見も認めるという「度量の広さ」が求められる。 多様性を尊重しない社会は息苦しいし、活力も生まない。
そもそもよく分からないのが、今回の騒ぎの発端だ。 一部の国会議員が映画に対する公的助成の在り方を問題視したり、政治団体の妨害があったとされるが、だからといってあれほどの過剰反応がなぜ起こるのか。
強いて言えば、日本社会特有の「空気」なのだろう。 上映によって具体的な実害が発生するかどうかという現実的な判断以前に、「やめておいた方が無難」という漠然とした思いが広がったのではないか。
この「空気」が戦前の日本を誤らせたことは、しばしば指摘されるところだ。 「グローバルスタンダード」と言いながら、相変わらず肝心なところで「忖度(そんたく)」や「横並び意識」から脱却できない。 私たちが克服しなければならない大きな宿題だろう。
「空気」に流されないためには、「何事も自分の目で見、自分の頭で考える」という姿勢が何より大切だ。 自主上映はまさにその精神に沿ったものといえる。 「自立」の風土を大きく育てたい。